コラム

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加藤直樹

#48:球場外の通訳 〜歯科受診〜

球場外の業務については過去のコラムで何度か触れてきましたが、ちょうど先日、休養日で私用を済ませているところへ、選手から「歯が痛くて何もできない」と連絡がありました。幸い自分の用事も早めに終りそうだったことと、選手が暮らす球団寮から近くにいたこともあり、すぐに近隣の歯科医を予約し診察に同行しました。実は、歯科受診を必要とする選手は割と多く、過去を振り返ると少なくとも毎年一人は受診を要するケースが出てきています。今回は歯科受診の際に知っておくと便利な専門用語をいくつか紹介したいと思います。

歯科医で使えるスペイン語

今回は、まずレントゲン撮影をして先生の診察を受けました。先生によると奥歯の根っこの神経が腐ってしまい膿が生じて炎症が起きている状態で、すぐにでも抜歯を要するケースでした。また、過去には抜歯までいかなくとも定期的な治療を要したケースや、ホワイトニングを希望した選手もいました。以下のような基本的な用語を覚えておくと、歯科医での通訳にも役に立ちます。

【日本語】【スペイン語】【日本語】【スペイン語】
麻酔anestesiaレントゲンを撮るsacar la placa
親知らずmuela del juicio抜歯extracción de diente
被せものcorona歯茎encias
pus神経nervio
虫歯caries人口歯diente artificial
炎症inflamación鎮痛剤calmante
歯石sarro処方箋receta médica
ホワイトニングblanqueamiento歯の嚙み合わせoclusión

■虫歯、骨折、手術、捻挫・・・、自身の実体験

医療用語は語学の参考書だけではなかなか触れる機会がなかったり、或いは勉強しても実際に現地で使われる言葉や表現とは違っていたりということがあったりします。例えば「レントゲン」は正式な医療用語では「radiografía」言いますが、「placa」の方が一般的に使われることが多かったり、「親知らず」もdiente cordal が医療用語ですが、「muela del juicio」と言う方が主流だったりします。実際、「親知らず」の正式名称は「第三大臼歯(だいさんだいきゅうし)または智歯(ちし)」らしいですが、そう言われてもわからない人の方が多いのではないでしょうか(笑)。

そういう点において、当時スペイン語を学んだコスタリカにいた時にケガや虫歯で何度も現地の病院を受診する機会があったことは、通訳者として活動する今、とても役に立っていると実感しています。プロ野球通訳として初めて選手と歯科医に行った時や、夜中に頭痛を訴えた選手と一緒に緊急外来を受診したり、また骨折の修復手術をする選手の執刀に同席して通訳したり、慌てずに通訳することができたのはまさに自分の実体験があったからでしょう。コスタリカ滞在時に、左手を骨折して手術をすることになった時はまさかこのような形で後の人生に役に立つとは思いもよりませんでした。

今回は歯科医受診のケースを紹介しました。本音を言うと、休日に突然選手から連絡が来たときは「休みの日はそっとしておいてほしいのに…」でした。ただ、異国の地で歯が痛い苦しさを想像すると、「すぐになんとかしてあげたい」と思いは変わり、幸い状況的にも同行してあげることができました。思えば、上述したコスタリカでの傷病時はは自分自身もいろんな人に助けてもらったものです。当時の恩を忘れず、今身近にいる外国人に還元していければと思います。

また今後のコラムを通じて球場外の通訳で知っておくと便利な用語について書いていきたいと思います。

加藤直樹

加藤直樹

福島県出身。スポーツメーカー勤務後、独立行政法人国際協力機構(JICA)の青年海外協力隊員として活動。その後、ジャイアンツアカデミーコーチを経て現在、巨人軍スペイン語通訳。

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