COLUMN
第17回:野球と信仰(前編)
来日する外国人選手はさまざまなバックグラウンドを持っています。
人種、宗教、生い立ちなどの違いから、同じ国から来た選手でも全く異なる価値観を持っている場合もあります。それらをできるだけ理解して彼らと接するのも、球団通訳者の仕事の一つです。
アジアの国々以外では、野球は主に北米と中南米でプレーされています。したがって、国策で無神論の立場を取るキューバのような国を除いて、ほとんどの選手はキリスト教が最も盛んに信仰されている国や地域の出身です。プロテスタントやカトリックなど、宗派は人によって異なりますが、宗教を自らのアイデンティティの一部としている選手が多く存在しています。信仰心の厚さはそれぞれ違いますが、就寝前に祈りをささげることを日課とする選手や、身体に十字架のタトゥーを入れている選手、どんなことがあっても下品な、神を冒涜する言葉を口にしない選手など、彼らと行動を共にしていると、その信心深さを垣間見ることが多々あります。SNSの自己紹介欄に「神のため」、「神様あっての自分」と書く選手や、ヒーローインタビューで、「神に感謝したい」と述べる選手がいるのもこのためです。
私も米国の大学で野球チームに所属していたとき、仲間と共に“FCA”という団体が主宰する奉仕活動に参加していました。FCAとは“Fellowship of Christian Athletes”の略で、キリスト教精神を基に、それぞれの部活動に所属する選手がキャンパスや教会の清掃、戦死した軍人や殉職した警察官の追悼、障がいを持つ子どもたちを対象とした野球教室の開催などを行います。これらの活動を通じてチームワークを養い、また人格形成も期待できることから、私の大学では常にチームとして活動に参加していました。(後編に続く)
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前田悠也
東京都出身。中学から米国に留学。現在、巨人軍英語通訳