COLUMN
第19回:泣いて笑って
10月21日、長かったようで短かったシーズンが終わりました。チームはリーグ優勝を達成したものの、惜しくもクライマックスシリーズのファイナルステージで敗退したことにより、日本シリーズ進出への望みは絶たれました。
2月のキャンプインから、思えばたくさんのことがありました。私が最初に担当した外国人選手は、開幕を目前に控えて退団してしまいました。最後に「いろいろありがとう」と抱きしめてくれた彼を応援する気持ちは今も変わりません。シーズン途中から新たに加入した外国人選手は攻守にわたり、チームの救世主と呼ぶにふさわしい活躍を見せていたものの、試合中に骨折して戦列を離れることを余儀なくされました。普段は屈託のない笑顔を見せる彼が、骨折の痛みと、戦線離脱を強いられる悔しさで涙する姿は今も目に焼き付いています。同じく途中加入したもう一人の外国人選手も獅子奮迅の活躍を見せ、さらには骨折した彼に代わって不慣れなポジションをこなし、8月にチームが勝利を収めた試合ではヒーローに選ばれ、私も彼とともに初めて一軍のお立ち台に上がりました。感情の起伏があまりないように見える彼ですが、とてもひたむきな性格で、試合前の練習が終わった後も室内練習場に移動して自分が納得するまでバットを振り続けるなど、熱い情熱の持ち主です。
9月にはチームの優勝の瞬間にも立ち会いました。当時はファーム施設でリハビリに取り組んでいた先述の外国人選手も駆けつけて、私たち通訳も選手たちとともに優勝の美酒を味わいました。骨折した彼ですが、驚異の回復力と不屈の闘志で今季絶望との下馬評を覆し、クライマックスシリーズ終盤にチームに復帰しました。しかしながら最後の最後で敗れ、チームの最終目標だった日本一達成はなりませんでした。 出会い、別れ、痛み、喜び、悔しさなど、選手の様々な感情に立ち会い、ともに笑い、ともに涙した一年でした。
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前田悠也
東京都出身。中学から米国に留学。現在、巨人軍英語通訳