コラム
COLUMN
前田悠也
第32回:中距離砲

野球には、打者のタイプを示すさまざまな表現が存在します。ホームランバッターを表す「長距離砲」や「スラッガー」、勝負強さを示す「クラッチヒッター」、バントなどの小技の効く「職人」、俊足を生かして敵をかく乱する「韋駄天」、積極性に優れ、1番打者を務める「リードオフマン」や「切り込み隊長」など、その打者の役割によって表現も異なります。
その中で、「中距離砲」と呼ばれるバッターが存在します。これは、長距離砲と呼ばれるホームランバッターと比較するとパワーには劣るものの、広角(右中間や左中間)に打ち分ける能力に長け、二塁打や三塁打などの長打を量産する打者に与えられる形容です。
この「中距離砲」を、英語では“gap-to-gap hitter”と表現します。“gap”とは文字通り「すきま」のことですが、野球では右中間や左中間など、守備位置の間を示す言葉で、高いコンタクト能力とバットコントロールで外野の定位置の間に打球を飛ばし、得点圏にランナーを進める上で非常に重要な役割を担うのがこの中距離砲です。
以前の日本プロ野球では外国人野手を獲得するにあたって、日本人選手にはないパワーが魅力の長距離砲と契約するパターンが圧倒的に多かったのは事実ですが、近年では日本人投手の球速や変化球の精度などの向上が著しく、純粋なパワーだけでは日本球界で結果を残すことは難しくなったため、確実なバッティングで高い打率が期待できる中距離砲の外国人選手を積極的に獲得する球団が増えました。
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前田悠也
東京都出身。中学から米国に留学。現在、巨人軍英語通訳