コラム
COLUMN
前田悠也
第36回:二軍降格の伝え方(後編)

ファーム降格を通告されるのは大抵、その日の試合が終わった直後ですが、まずマネージャーから通訳に、担当する選手を伴って監督室を訪れるように言われます。多くの場合、選手はその時点で自分が降格になったことを悟ります。監督室で降格を告げられる際、その理由や、ファームで取り組んでほしい課題などを説明されます。ほとんどの場合選手は、神妙な面持ちで監督やコーチの話に耳を傾け、周囲の励ましの言葉に対しうなずいて球場を後にします。
ここで重要なのが、前回のコラムで記した日本プロ野球と海外リーグのファーム降格についての認識の違いを説明して、決して不必要な戦力とのレッテルを張られたわけではないことを選手に理解してもらうことと、「なるべく多くの打席に立って活きたボールを見てきてほしい」、「たくさんのイニングを投げてスタミナの維持に努めてほしい」、「どんなときでも努力を怠らない姿勢を見せてファームの若手選手の手本になってほしい」など、その選手のモチベーションが途切れないように首脳陣がかける言葉を正確に訳すことです。
私は一軍通訳と二軍通訳をそれぞれ2年ずつ務めました。ファームに在籍する外国人選手は、故障の場合を除き、成績不振で一軍を追われた選手がほとんどでした。マイナーや独立リーグで長い下積みを経験した外国人選手の多くは、日本で二軍降格を告げられても淡々と受け止め、また一軍に呼ばれるまでの間、前向きにファームでの時間を過ごす人が多かった一方、メジャーや日本球界での実績がある選手は、どうしても自尊心が傷つき、精神的な状態が上がらないケースも多く見てきました。ファームの通訳にはそういった選手の心理状態を理解しつつ寄り添う姿勢が求められると思います。
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前田悠也
東京都出身。中学から米国に留学。現在、巨人軍英語通訳