コラム

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前田悠也

第37回:頭の回転をスピーディに保つ方法(前編)

同時に二つの言語を操る通訳者にとって、頭脳の瞬発力は欠かせません。一つの言語を理解して、これをすばやくもう一つの言語に変換する、いわば「切り替えの速さ」が必要です。これは経験によるところが大きいとともに、日常の過ごし方にも大きく左右されます。今回は私が実践している、通訳者として頭の回転をスピーディに保つ方法をいくつかご紹介します。

一つ目は睡眠です。当然ですが、睡眠不足の状態では人間の脳はうまく機能しません。先日SNS上で、とある精神科医の先生が、睡眠中に脳内では老廃物の浄化が行われている、とおっしゃっていました。調べてみると、脳脊髄液と呼ばれる液体が、ノンレム睡眠の間に脳内を駆け巡り、脳内の毒素や疲労物質などを洗い流しているそうです。したがって、深い睡眠を十分に確保して、脳にしっかりと休息の時間を与えることが、脳の正常な機能を促進すると言えます。睡眠不足で日中に頭がボーっとした経験はどなたにもあると思います。どんな仕事にも当てはまりますが、通訳者のように脳内の瞬時の切り替えが要求される職業では、それが顕著に表れます。プロ野球通訳者に関してはシーズン中、ナイターの試合が終わってから帰宅して、就寝するのが真夜中になることも多々あります。そのような中でも睡眠時間を十分に確保して翌日も脳が正常に働くよう、以下のような工夫をしています。

  1. 日が昇った後の午前中も覚醒することなく眠り続けるために、カーテンを閉め切って部屋を暗くする。
  2. 入浴後に水風呂に入る、もしくは冷たいシャワーを浴びて身体の深部体温を冷やすことによって入眠しやすい状態にする。
  3. 飲酒は睡眠の質を下げるため、深酒は控える。
  4. スマートフォンやタブレット端末の画面からは脳を覚醒させるブルーライトが発生するため、業務上必要な場合を除いて就寝前にこれらの使用を控える。

後編では、頭脳の瞬発力を保つために日中行っている工夫についてお話します。

前田悠也

前田悠也

東京都出身。中学から米国に留学。現在、巨人軍英語通訳

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