COLUMN
第41回:取材で多用される表現と役立つ豆知識(前編)

球団通訳者の業務の一つに、マスコミなどの取材対応があります。記者会見やヒーローインタビュー、試合後の囲み取材など、通訳する場面は多岐にわたりますが、通訳する機会を重ねるほど、質問の内容はある程度定型化されていることがわかります。今回は、日本語の質問を英語に訳す際に覚えておくと便利な表現についてお話します。
まず圧倒的に多いのが、「~を振り返って」という質問です。選手のその日の状態やパフォーマンスなどに関する内容で、取材の冒頭に聞かれること多いこの質問ですが、いくつか訳し方をご紹介します。もしその質問が、その日の全体的な内容について言及している場合は、“look back”を使い、“Looking back, how would you rate your overall performance today?”などのように、全体的な自己評価を選手から引き出せるように訳します。対して、あるプレーや打席など、具体的な場面を振り返る質問が投げかけられた場合は、“walk someone through”を使い、“Walk me through your first at-bat”や、“Walk me through everything that transpired at the moment”などのように、選手が具体的にその時の状況を話せるように誘導します。
次に多いのが、何かの印象について問われる質問です。選手はこれから対戦する相手やその球場、任される役割などについての印象について多く聞かれます。対戦相手などの印象であれば、そのまま“impression”を使い訳すことができますが、「一番打者(を打つこと)に対してどのような印象をお持ちですか」や、先発投手が中継ぎに配置転換されるに当たって、「中継ぎ(を任されること)に対してどのようなイメージをお持ちですか」などのように、単純な「印象」とは少しニュアンスが異なる質問が来たときは、“What comes to your mind”や、“What pops into your head”などのように、少し意訳を加えると、選手がその役割に抱く漠然としたイメージを言語化しやすくなり、結果的に取材する側も求めていた答えを得ることができます。
次回のコラムでは、再び取材の場で役立つ表現と、通訳するにあたって持つべき心構えについてお話します。
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前田悠也
東京都出身。中学から米国に留学。現在、巨人軍英語通訳