COLUMN
第43回:今シーズンを振り返って(前編)

10月中旬、長かったようで短かったシーズンが終了しました。
私が所属する球団は2年連続でプレーオフに進出するも敗れ、日本シリーズ優勝への夢は再び断たれました。思えば今年もさまざまな出来事がありました。
1月末、キャンプインの直前には新加入の外国人選手の入団会見を通訳しました。
メジャー時代には現在ロサンゼルス・ドジャースに所属する大谷翔平選手とチームメートだった彼には、同選手とのエピソードを尋ねる質問が集中することが予想されたため、あらかじめ情報収集を行い、予備知識を得てから会見に臨みました。
2月の宮崎、沖縄キャンプは例年よりも気温が低く、日中も冷え込む日が多かったせいか、体調不良を訴える外国人選手が数名いました。また当時私が担当した2名の外国人選手のうち、一人は内野手登録、もう一人は外野手登録だったため、スケジュールの異なる2名を同時に担当する大変さも味わいました。その一方で選手と外食し、親交を深める機会にも恵まれました。
3月のオープン戦期間中は選手とともにさまざまな遠征先を訪れたと同時に、MLB東京シリーズと銘打って開催されたメジャーリーグとの親善試合でもベンチに入りました。
普段の試合と異なり、相手球団の監督や審判団も米国人だったため、監督がメンバー表交換とグラウンドルールの確認をホームベース付近で行った際には通訳として私も同行しました。
この経験で、普段は選手の通訳として業務に取り組んでいる私には、いつか監督やコーチなど、外国人指導者の通訳として、別の視点から野球の勉強をしてみたいという気持ちが芽生えました。
3月下旬、本拠地で開幕を迎えた際には、私が担当する選手の一人が来日初本塁打を含む3安打を放つ活躍でチームの勝利に貢献し、開幕戦でいきなりヒーローに選ばれました。シーズン開幕を迎えるにあたり、試合前には首脳陣、選手、スタッフが一人ずつ握手をかわし互いの健闘を祈るなど、開幕戦は普段とは違った高揚感のなか戦われます。その独特な雰囲気のなかでヒーローインタビューを訳したことは、今後も印象に残ることでしょう。
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前田悠也
東京都出身。中学から米国に留学。現在、巨人軍英語通訳