COLUMN
【新連載】第1回:通訳の個性

初めまして。
読売巨人軍で英語通訳として25年目を迎えました、依田大介と申します。
このたび、スポーツマネジメント通訳協会にてコラムを書かせていただく機会をいただき、大変光栄に思っております。
これまでの経験を通じて、私自身が感じ、考えるようになったことを、この場で少しずつお伝えしていければと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
初回ですので、簡単に自己紹介をさせていただきます。
私は当初から通訳を志していたわけではありません。就職浪人をしていた時期に、たまたま巨人軍から声をかけていただき、この仕事を始めました。
野球ファンではあったため知識はありましたが、自身が野球部出身というわけではありません。
今振り返ると、野球経験がなかったことが、「自分はまだ何もわかっていない」という自覚につながり、それが結果として、“謙虚さ”や“わからないことは、わからないと言う”姿勢を育ててくれたように思います。
大学卒業後すぐで若かった私に対して、担当した外国人選手だけでなく、球団関係者の皆さんが親切にさまざまなことを教え、気にかけてくださいました。
こうした経験を通じて、「取り繕わず、素直でいることが一番大切だ」という考え方が、自分の根本に形成されたように思います。
かつてチームを率いた指導者の方も、成長する選手の資質として「素直さ」を大切にされていたことを印象深く覚えています。私自身も、“人としての在り方”において、とても大切な要素だと考えています。
外国人選手が、チームや首脳陣に対して何らかの不満を抱くことはあります。
そうした場面でも、私は波風を立てないために気持ちを抑え込ませるのではなく、できる限り本人が相手に直接伝えられる環境を作るよう心がけています。
誠実に、感情的にならずに伝えれば、たとえ賛同には至らなくても、その思いを理解してもらえる可能性は高まります。
選手側も、受け取る側も、自分の気持ちに素直でいる。そうした関係性が風通しの良い組織をつくり、結果として通訳としての仕事も進めやすくなると感じています。
最後にひとつ、お断りをしておきます。
今後もこの場でさまざまな考えを書かせていただく予定ですが、私自身、今でも仕事を振り返って反省することは少なくありません。
いまも学び続けている立場であり、ここで書く内容はあくまで私個人の経験と考えに基づくものです。
「通訳はこうあるべきだ」と主張したいわけではありません。
協会への応援メッセージでもお伝えした通り、通訳には単に言葉を置き換えるだけでなく、全体の調和や目的達成のために、それぞれが工夫できる余地があると考えています。
異なる個性や強みを持つ通訳が、それぞれの方法論で現場に向き合う。
それは、この仕事が多様性に富み、可能性に満ちた職業であるということでもあり、私はとても素敵なことだと思っています。
一覧へ戻る
依田大介
香港生まれ、6歳で日本帰国後、中学までインターナショナルスクールに通う。大学卒業翌年より読売巨人軍勤務。現在、巨人軍英語通訳。