コラム

COLUMN

加藤直樹

#67:プロ野球の仕事と睡眠(後編)

前回コラムで書いたような睡眠不足が何日も続くと寝れないことに対する不安や焦りが募り、意図とは反対にさらに寝れなくなってしまうという悪循環に陥りかけていました。寝れないと体も頭も回復せず、業務の質は下がり体調不良の原因にもなるので、なんとかしなければと巷で言われるような対策をいくつか実践はしてみたましたが、なかなか効果が実感できない日が続きました。

代表的な睡眠対策も効果出ず

良質な睡眠には何より規則正しい生活が大事と言われますが、平日と週末で試合開始時間が違ったり、試合時間も一定ではなく、延長戦に入ればそれこそ帰宅時には日を跨ぐこともあるためなかなか一定の生活リズムを保つことが難しいのがプロ野球の仕事。ということもあり、それ以外の面で、例えば、ジョギングや軽い筋トレ、日光を浴びること、就寝前はスマホを控えること。さらに、メラトニンの生成を助けるとされる納豆や乳製品を摂り、夕方以降はカフェインを避けるなど、睡眠によいと言われることは一通り試してみました。

ただ、どれもなかなかこれといった効果は実感できず、前回コラムで書いたように、2日連続で睡眠時間2時間で過ごしたときには、さすがにこれ以上寝れない日が続くと体がもたないと思い、できれば避けたかったのですが睡眠導入剤を飲むことにしました。もっと悪いのは、その夜以降、「薬を飲んで眠れた=薬がないと眠れない」と脳が認識してしまったことで、4日間も続けて飲み続けてしまいました。

いつでも誰にでもできる「あれ」のおかげで睡眠が改善

睡眠不足なのになかなか夜が眠れない日が続き、段々と夜が怖くさえなってきた頃、たまたまスペイン語の学習も兼ねてYouTubeでチャンネル登録していたコロンビア人のあるお医者さんの動画のなかで、副交感神経の役割を持つ「迷走神経」が睡眠のカギを握っていると話していました。その迷走神経の活動を優位にするために有効だと紹介していた方法の一つが「うがい」でした。

ドクターによると30秒から一分ほどガラガラと音を鳴らしながらうがいすることを3セット程度実施します。すると、うがいで振動、刺激された喉の筋肉は脳の迷走神経と繋がっていることから、迷走神経が刺激される効果が期待され、その結果リラックス作用のある神経物質の分泌が促されるのだそうです。深呼吸や瞑想、自律神経を整える音楽を聴くなどは以前に聞いたこともトライしたこともありましたが、睡眠の文脈でうがいが良いとはこれまで全く聞いたことがなく、正直はじめは半信半疑でした。しかし、これまで何をしてもあまり効果が得られていなかったので、取り敢えず実践してみました。すると、うがいをした直後はそんなに劇的な変化は感じなかったものの、ベッドに横になるとこれまで寝れない夜はこぞって頭の中に雑念があったのが一切なく、体は力が抜けて静寂の中にいるような感覚に陥り、気づくと朝になっていたのです。朝目を覚ました時は、久しく感じていなかったよく寝れた感覚の余韻に浸りながら、とても安心しました。

その日以降、毎晩ベッドに入る前には必ずうがいをするようにしていて、あれほど苦労していた入眠も5分から10分ほどで意識が遠のくようになりました。迷走神経とうがいの相関関係はまだ医学的にはまだ研究途中の段階でもあるようですが、以来よく眠れる日々が続いていることから、少なくとも私には大きな効果があったと言えそうです。

_________________________________

通訳スタッフに限らず、チーム内の同僚に話を聞くと、夜なかなか寝付けないことはそんなに珍しいことではないことがわかります。前回コラムでも触れたように、多くの人が休息に向かう時間帯にもっとも高い集中力と緊張感を求められるプロ野球という仕事の特性が影響しているのでしょう。選手を支える立場として最高のサポートをするためにも、睡眠の大切さそして、セルフコンディショニングの重要性を改めて学び、実感した数週間でした。

加藤直樹

加藤直樹

福島県出身。スポーツメーカー勤務後、独立行政法人国際協力機構(JICA)の青年海外協力隊員として活動。その後、ジャイアンツアカデミーコーチを経て現在、巨人軍スペイン語通訳。

一覧へ戻る