COLUMN
#66:プロ野球の仕事と睡眠(前編)

今回はスポーツ通訳としてというよりは、プロ野球球団の一職員としての立場から、私自身まさにこのコラムを書いている今日も苦労している「睡眠」についてです。帰宅時間が遅く自ずと睡眠不足になりがちなのもそうですし、火曜日から日曜日までは毎日試合があるのが基本で、とりわけ今は夏休み期間でもあり9連戦の真っ只中。オンとオフの切り替えが難しく、帰宅してもなかなか寝付けない日が続き、どうしたものかと頭を悩ませているまさにこの頃で、現状と対策を共有してみようと思います。
■2日続けて睡眠時間は2時間
ここ数年はクローザーのポジションを任されている外国人投手を担当することが多く、一番テンションの高まる試合最後の瞬間にベンチ入りするため家に着く頃になってもまだ試合の興奮が冷めやまないということがよくあります。おそらくこれがオンオフの切り替えが難しいもう一つの理由で、体は疲れているはずなのに目をつぶっても意識がはっきりしたままでなかなか寝付けないことがここ数年増えました。つい先日なんかは2日連続で朝方5時頃まで寝むれず…、2児の父親でもある自分は子どもたちとともに7時前には起きるので、睡眠時間2時間あるかないかで勤務しなければならず、気を抜くとぼーっとする体(脳みそ)にムチを打ってなんとか気合いで乗り切りました(泣)
ただ、もっと厄介なのが、体がこれだけ疲れていても、臨戦態勢に入った脳がなかなか緊張を解いてくれずいつまで経っても寝付けないこと。家路につく頃は良い具合に眠気があったのがベッドに横になった途端目が覚めてしまうのです。これはさすがにまずいと思い、睡眠について真剣に考えるようになりました。
■自律神経と睡眠
夜眠ることができない要因の一つに、自律神経の働きが関係していると言われます。自律神経には、活動時に優位となる交感神経と、休息時に優位となる副交感神経があります。本来であれば夜になるにつれて交感神経の活動は徐々に低下し、副交感神経が優位になることで心拍数や呼吸も落ち着き、自然と眠りにつきやすい状態になります。しかし、強い緊張や興奮が続くと交感神経の活動が高いままとなり、体は疲れているにもかかわらず脳は覚醒状態を維持し、寝つきが悪くなることがあるそうです。
本来人間の生活は日が昇れば起きて、仕事(狩りや収穫)に出向き、日が沈めば家に帰り夜は寝るというシンプルな生活でした。ところが今は、電気やインターネットのおかげで日が沈んだ後も仕事はできますし、自宅にいても明るい照明のもとでスマホや映画などに興じることができてしまうので、活動を休止すべき交感神経の働きが高い状態が続き、副交感神経優位になりません。そうすると、体がいくら休みたくても脳が覚醒状態を維持しいつまでも入眠できないということが起きてしまうようです。
■リラックスすべき時間に緊張はクライマックス
プロ野球のスケジュールは週末のドーム球場を除き、大半がナイターゲーム。18時00分に開始し、試合時間は平均3時間ちょっと。つまり、一般的な仕事の人たちであれば、ご飯を食べ終えてお風呂に入ったり、寝る前に好きなことをしてリラックスしているであろう21時頃に、勝てばテンションが、負ければ悔しさが最高潮に達する設計となっているため、交感神経は鎮まるどころか活発化します。特に上述したように、9回の一番プレッシャーのかかる場面で登場する選手とともにベンチに入る自分の心臓は、耳を澄ませば鼓動が聞こえそうなほどドキドキしていることも多々あります。一度温まったエンジンはなかなか冷めてくれないのと同じで、これでは交感神経はなかなか退いてくれないことも納得がいきました。
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入眠障害の理由がなんとなくわかり、自分なりにいくつか対策を調べて、ここ最近取り組みはじめました。次回はその具体的内容と実際に効果がどれくらいあったかについて報告したいと思います。
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加藤直樹
福島県出身。スポーツメーカー勤務後、独立行政法人国際協力機構(JICA)の青年海外協力隊員として活動。その後、ジャイアンツアカデミーコーチを経て現在、巨人軍スペイン語通訳。