コラム

COLUMN

依田大介

第6回:一年目の彼への助言

先日、今年から通訳として働き始めた青年から、通訳として知っておくべき、試合中の留意点などについて助言を求められることがありました。

彼の担当している選手がリハビリを終え、ついに二軍公式戦に登板する数日前のことでした。

そこで今回は、そのときの彼とのやり取りをご紹介したいと思います。

初心をまだ鮮明に抱いている彼の立ち位置は、通訳になることを志す方のそれに近く、参考になることがあると思うからです。

「試合中、ベンチ内のどこにいればいいでしょうか。」

誰かの邪魔にならないように気を付けながら、そのうえで、担当選手と首脳陣の双方から見て、選手寄りの位置が良いように思います。

選手は、真隣に通訳がいることを、監視されているようで好まないことが多いです。呼びかけたらすぐに横に並ぶことができる距離感を意識しています。

「選手がイニング途中に降板してベンチに戻るとき、付き従って歩くべきか。」

これも、ぴったり横に付くことはないと思いますが、先にさっさと一人でベンチに戻ってしまうのも、冷たさを感じさせます。

個人的には、数メートルの距離を開けて、選手と同じようなペースでベンチに向かいます。

これには二つの理由があります。

一つは、カメラの枠内になるべく収まりたくないから。

もう一つは、通訳が選手とぴったりと並んでいると、ベンチでチームメートに迎え入れられるときに、私も迎え入れられるような形になり、それを滑稽だと感じるからです。

私からは、「選手に声をかけるタイミングに気を配る」ことも付言しました。

試合中の選手は通常とは異なる精神状態にあり、話しかけるタイミングを選ばないと、伝えてもまったく耳に届いていない可能性があります。

聞いていないだけでなく、場合によっては、気分を害するような結果にならないとも限りません。

球数、打席がいつ廻ってくるか、ブルペンの準備状況、首脳陣の表情やその醸し出す空気感。

ざっと挙げても、こんなことを意識しながら、試合中の通訳はベンチ内で四方に注意を巡らせています。

依田大介

依田大介

香港生まれ、6歳で日本帰国後、中学までインターナショナルスクールに通う。大学卒業翌年より読売巨人軍勤務。現在、巨人軍英語通訳。

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