COLUMN
#46:助っ人帰国の舞台裏(前編)

レギュラーシーズンを3位で終えたジャイアンツはクライマックスシリーズに出場しましたが、ベイスターズを前に敗退し10月12日を以て今シーズン終了となりました。全日程を終えたあと、支配下選手である助っ人外国人は各々のタイミングで母国を帰国していきます。担当の通訳者は提携先の旅行会社と連携しながら帰国便を手配し、選手の帰国準備から空港での見送りまで業務は続きます。とりわけ搭乗手続きで発生したトラブル対応については過去のコラムでも紹介しました。
#25:搭乗トラブルの対応(前編)
#26:搭乗トラブルの対応(後編)
さて、今年も担当した二人の支配下の帰国に付き添い空港に行きましたが、予期せぬ事態が発生しその場で通訳者が対応を迫られる状況がありました。
◼️荷物超過料金が85万円!?
来季の契約更新が未定あるいは家族を伴って帰国する選手は手荷物が多くなる傾向にあり、今回の選手は一緒に帰国するパートナーの女性と併せてスーツケース類が合計9個ありました。預け荷物の許容量は航空会社や航空券の種類によって決まっており、超過する場合は追加料金が発生します。事前に旅行会社担当者に尋ねると、今回使用する航空会社の預け荷物の “数量” は ”無制限” とのこと。その上、荷物40kgまでOKとのことで、通常32kgまたは23kgまでの荷物が2個まで無料で、3個目から一個辺り超過料金2〜3万円することが多いですが、無制限でしかも40kgまでと聞いた選手も私も「ラッキー」としか考えず、“重量” のことは全く心配していませんでした。
そして当日空港カウンターへ行くと、「超過料金が85万円」と言われて私も選手も、選手のパートナーも唖然とします。事前に聞いていた話と違うではないかと怒り出す両名を宥めつつ、状況を把握するためにわたしは冷静を保つことに努めて係員に話を聞くと、どうやら荷物の総重量が40kg迄の範囲での個数無制限だったのです。つまり、40kgは荷物一つあたりの上限ではなく、すべての合計。40kg以上の超過重量は1kgあたり8500円とのことで、総量180kgあったためその額は85万円。個数の超過分を払うことはよくありますが、まさか重量オーバーでしかも一桁見間違えているのではないかと思うほどの金額を前にしばらく途方にくれるしかなく・・・。到底払える額ではないことから、選択肢はフライトをキャンセルして違う便を探すしかありませんでした。
◼️急遽帰国を明日へ変更、睡眠時間2時間で再びへ空港に向かう
時刻は夜22時近くだったこともあり、藁にすがる思いで旅行会社担当の方に電話をすると、幸い電話に応答してくれたのみならず、PCが近くにあったようですぐにフライトを探してくれました。すると、数日前は空席がなかったその日の翌日の午前中の便に奇跡的に2席空きが出たことがわかり、すぐに手配をしてもらうことができました。ただ、この時は羽田空港で翌日の便は成田発。選手とパートナーはそのままタクシーで成田空港に向かい近隣のホテルで一泊することにし、私は自宅に一度帰宅してから早朝に成田に向かうことにしてその日は一旦別れましたが、帰宅したのは深夜1時過ぎ。成田空港には朝8時過ぎには着く必要があったので、自宅では2時間だけ横になり、朝6時には自家用車で成田空港へ向かいました。前日のことがあったので、空港でのチェックイン手続きの時は全てを終えるまでなかなか気は緩みませんでしたが、結果的に預け荷物の超過料金は数万円で収まり、ようやく選手がチェックインを済ませ出国ゲートをくぐるのを見届けたときは、思わず大きく息を吐いてようやく肩の力が抜くことができました。
睡眠不足で運転した往路は、気が張っていたこともあり眠気はありませんでしたが、さすがに帰りは途中コンビニエンスストアでコーヒーを買わなければとても安全には運転できないほど、疲労と眠気に襲われました。
遠足は家に着くまでが遠足とはよく言ったものですが、シーズンが終わっても選手が帰国するまでは最後まで気を抜いてはいけないと、改めて実感しましたし、超過料金のことなど事前の状況把握や確認が足りていなかったことを反省する結果ともなりました。
次回も引き続き選手帰国前のサポートと空港のチェックイン手続きで実際に起きたトラブルについて書きたいと思います。
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加藤直樹
福島県出身。スポーツメーカー勤務後、独立行政法人国際協力機構(JICA)の青年海外協力隊員として活動。その後、ジャイアンツアカデミーコーチを経て現在、巨人軍スペイン語通訳。