コラム

COLUMN

前田悠也

第47回:うれしかったLINE

先日私の携帯電話に、帰国中のとある選手からメッセージが届きました。単年契約を終え、来季の去就が注目されていた彼でしたが、正式に球団との再契約が決まると、真っ先にその旨を私に教えてくれました。闘志あふれるプレースタイルの彼は今季、チームで最多本塁打、最多打点を記録する活躍を見せ、来季も欠かせない戦力として球団が残留を要請して、戻ってくることが決まりました。印象に残っている彼とのエピソードは数多くあります。

私の祖父は、私が所属する球団の大ファンでした。今年の9月、闘病中だった祖父が危篤に陥ったとき、「少しでも元気になってくれれば」と、色紙に祖父の名前を入れてサインしてくれました。また、病院で祖父に付き添うため数日間チームを離れたときには、「きみのおじいさんが一日も早く回復するよう夫婦で祈っている」とメッセージをくれました。残念ながら祖父は10月に他界しましたが、亡くなる直前の試合でその選手はホームランを打ちました。結局これが、祖父が生涯で見た最後のホームランとなりました。亡くなった当日は試合があったため、そばで看取ることはできませんでしたが、後日叔父や叔母から、「最後の力を振り絞ってテレビで中継を観ていた。とても喜んでいた」と聞かされました。それを本人にも伝えたところ、なにも言わずに抱きしめてくれました。

選手は通訳を信頼すると、進んで家族に引き合わせてくれるようになります。シーズンが開幕してしばらく経つと、私生活のサポートを通して、彼の奥さんも徐々に私を頼ってくれるようになりました。遠征先では頻繁に、「日ごろのお礼」と言って、夫婦で食事に誘ってくれました。あるオフの日には、突然ビデオ通話で私に連絡がきました。何事かと思い電話を取ると、そこには砂浜で日光浴を楽しむ二人の姿がありました。「きみもおいでよ」と誘ってくれましたが、その日は用事があったため丁重に断りました。しかしどこまでも気さくな夫婦の思いやりに、心が温かくなりました。またあるときは、来日中の両親が試合前の打撃練習をベンチで見学したがっている、と選手から相談があり、私がその手配をすると、奥さんが、「単なる通訳ではなく、私たち夫婦の友人でいてくれてありがとう」とメッセージをくれました。これまで通訳を務めてきて送られてきたLINEで、いちばんうれしかったメッセージです。

そして先日、その選手から再契約を結んだ報告のLINEがきました。そこには、「来年も通訳としてそばで支えてほしい」、と書かれていました。大切な友人夫妻の信頼に応えるべく、来年もさらなる高みを目指します。

前田悠也

前田悠也

東京都出身。中学から米国に留学。現在、巨人軍英語通訳

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