コラム

COLUMN

前田悠也

第51回:「塁間」の今昔

“Baseball”には「野球」という訳が充てられますが、直訳すると「塁球」となります。文字通り、「塁(ベース)」と「球(ボール)」を使ってプレーする競技です。「塁」とはもともと砦などの要塞を表す軍事用語で、「基地」、「拠点」などを表す“base”に対する訳として、その呼び名が採用されたと考えられています。

得点とストライク・ボールの判定に用いられる五角形のホームベース(home plate)を除いて、1、2、3塁には正方形のものが使われ、それらは“bases”、もしくは“bags”と呼ばれています。公認野球規則にその大きさと形状が明記されていますが、2023年からメジャーリーグベースボールにおいて、正方形ベースの一辺が15インチ(約38センチ)から18インチ(約46センチ)に変更されたことに伴い、日本でも2026年シーズンから従来よりも大きいサイズの塁が導入されることになりました。

ベースの大きさが変更された理由はふたつあります。ひとつは選手同士の接触を極力防ぎ、彼らの身体的な安全を守るためです。もうひとつは、塁間(ベースとベースの間)距離が短くなり、攻撃側のチームが従来と比べて積極的に盗塁などの戦略を用いて進塁を試みるようになることで、ファンにとってプロ野球の興行がより魅力的になると期待されるためです。

2023年のメジャーリーグ開幕時にこのルールが導入される以前は、塁間の長さは27.431メートルと規定されていました。この「27.431」という中途半端な数字は、米国の公認野球規則で定められた「塁間距離は90フィート」という規則を、メートル法を使う日本式に換算したため生まれたものです。

これに因んで、米国では塁間のことを“Ninety”(ナインティー)と呼びます。この数字は、あるときは二人の選手がキャッチボールをする際に、互いが投げたい距離の目安になります。またあるときは、内野ゴロを放って全力疾走したにも関わらず、一塁でフォースアウトになってベンチに帰ってきた選手に対して、“Good ninety”(ナイスラン)と声をかけて励ますこともあります。

ルールが変更され、塁間の距離が90フィートではなくなってから日が浅い今も、野球界に深く根付いた“Ninety”という表現は通用しますが、時間が経つにつれてどのようなに呼び方に変わっていくのかが楽しみです。

前田悠也

前田悠也

東京都出身。中学から米国に留学。現在、巨人軍英語通訳

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