COLUMN
第53回:遠征先でのハプニング
プロ野球には移動がつきものです。北は北海道から南は沖縄まで、さまざまな土地を訪れて試合を行います。選手が遠征に参加する際は、私たち通訳も行動を共にします。移動する機会が増えるほど、旅先でのトラブルやハプニングにも多く遭遇します。今回のコラムでは、移動中や遠征先でこれまで私が経験した、思いがけないできごとについてお話します。
とあるホテルに宿泊した際、廊下を通りかかったところ選手から突然、「助けてほしい」と声をかけられました。何事かと思い彼の部屋をたずねると、トイレの水が流れ続けて止まらないことがわかりました。日常生活でも、トイレが詰まって流れないなどの問題は頻繁に起こりますが、「トイレの水が流れ続けて止まらない」という経験をされた方は少ないのではないでしょうか。選手に代わりフロントに連絡をして、業者にも来てもらいましたが一向に改善しません。このときは仕方なく、選手に別の部屋に移ってもらいました。
駅、空港、宿舎で多いのが、選手がサインや写真撮影を求められることです。他の利用客が迷惑するばかりでなく、特に駅構内では人が殺到することにより線路へ転落する可能性などもあることから、球団の方針として宿舎内、もしくは公共交通機関を利用して移動する際はこれらに応じないことが周知されています。にもかかわらず、制止するこちらの意向を無視してしつこくサインや写真撮影を求める人が一定数見られます。その目的は不明ですが、選手が辟易するため、このような場合は通訳が代わりに遠慮するように求めます。
他にも、金庫が開かない、呼んだタクシーが来ないなど、さまざまなハプニングがあります。大切なのは、想像していなかった事態が起きたとき、柔軟に対応できるマネジメント力だと思います。しかしそれは、現場で経験を積んで徐々に身につくものであり、最初から長けている人は少ないかもしれません。当協会の取り組みが、スポーツ通訳を目指すみなさんの第一歩となるよう願っています。

前田悠也
東京都出身。中学から米国に留学。現在、巨人軍英語通訳