COLUMN
第2回:私の周りの通訳者

前回は、さまざまな強みや個性を持つ通訳、つまり「通訳の多様性」について触れました。
今回は、私とともに働いている二人の通訳をご紹介したいと思います。
一人は、理学療法士の資格を持つ通訳です。
専門知識を有する彼が選手とトレーナーの間に入ると、双方の意図や話の要点を迅速に理解できるため、コミュニケーションがより円滑になります。
また、専門的な知識や経験に基づく洞察力があるため、言葉として表れていない部分まで推し量り、それを補いながら通訳することができます。結果として会話はより深く、本質的なものになります。これは私が実際にトレーナーから聞いた彼への評価です。
さらに、選手がトレーニングを行っている際には、身体の動きや使い方に関する知識を生かし、その視点から選手に助言を行うこともあります。
もう一人は、メンタルトレーニングに関する知識を有し、現在も学び続けている通訳です。
この分野を学ぼうと思った動機を彼に尋ねたところ、「担当選手が落ち込んでマイナス思考に陥ったとき、どのような声掛けをすればよいのか、どのように向き合うべきかを知りたかったからです」と話してくれました。
選手が前向きではない発言をしたり、弱音を吐いたりすることがあります。そんなとき、彼はまずその気持ちを受け止めます。そのうえで、選手自身が今向き合うことのできる課題に焦点を当て、選手が前向きな気持ちで練習に取り組めるようサポートしています。
では、私が他の通訳と異なる点は何でしょうか。
20年以上同じ球団に所属しているため、球団内のさまざまな人たちのことをよく知っています。外国人選手がその時々に必要としている知恵や助けを提供できる人に関わってもらうこと、そして適切な人材と選手をつなぐことができるのは、長年の経験によるものだと考えています。
例えば担当選手が投手であれば、コーチだけでなく、トレーナーやデータ担当者、さらには日々キャッチボールの相手を務めるブルペン捕手などとも頻繁に意見交換を行います。
それぞれが選手の状態をどのように見ているのかを共有し、必要に応じて選手本人にも伝えることで、多くの知恵や見立てをチーム全体で共有できるようにしています。
巨人軍には、このほかにも多様なバックグラウンドを持つ通訳が数多く在籍しています。それぞれが独自の個性や強みを生かしながら、互いに助け合い、外国人選手を支えています。
通訳という仕事は、単に言葉を訳すだけではありません。自らの経験や専門性を生かしながら、選手やチームに価値を提供する仕事でもあります。
私の周りの通訳たちは、そのことを日々体現している存在なのです。
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依田大介
香港生まれ、6歳で日本帰国後、中学までインターナショナルスクールに通う。大学卒業翌年より読売巨人軍勤務。現在、巨人軍英語通訳。