COLUMN
第4回:選手の心を捉える①

前回「第3回:選手との関係作りで大事にしたいこと」の最後に、「外国人選手の心を捉える」と書きました。
書きながら打算的な響きが鼻につかなくもなかったのですが、この2つのポイントをしっかり押さえることで、選手からの信頼はとても高まると思っています。
今回は一つ目として、外国人選手がケガをしたときの全般的な対応の重要性について書きたいと思います。
同じケガでも、骨折や筋肉の損傷などは、ある程度リハビリの方法論や試合復帰までの長さなどがわかっているので、今回私が想定する類のケガではありません。
私の念頭にあるのは、例えば膝痛や腰痛などの、痛みを生じさせている原因が特定しにくいケガのことです。
こうしたケガは、MRIやレントゲンなどの検査をしても、それを読影するドクターによっては、読み取り方が異なることがあります。
また、球団トレーナーや理学療法士の過去のリハビリ指導経験が、必ずしも当てはまらないということもよくあります。
こうなりますと、日々のリハビリは、おおまかな方向性はあれども、その日その日に選手がケガについてどのように感じているかに基づいて、細かな修正を要する作業となります。
こうした時、選手がいろいろなことを不安に思っているだろうことは容易に想像ができます。
痛みの原因は何なのか? いつ復帰できるのか? リハビリはトレーナー側の想定した通りに進んでいるのか? (その年で契約が切れる場合は)来季の契約にどう影響するか? などです。
この不安な気持ちに寄り添って、少しでも前向きな気持ちでリハビリに取り組めるような心理状態にしてあげられるのが通訳です。

通訳としての知識の蓄積などがあれば、過去の経験からさまざまな治療法や外部の民間療法などをトレーナーに提案することができます。また、選手の本音を聞き出して、トレーナー主導で進みがちなリハビリ計画に選手の意向をより反映してもらうこともできます。
どのような行動であっても、大事なのは、通訳が単なる双方の仲介者に留まるのではなく、率先して流れを主導するくらいの主体性を持って臨んでいる姿を、選手に見せることです。
不安感に寄り添い、主体的に、透明性を持って動く。
これは次回書こうと思っている、もう一つの「選手の心を捉えるポイント」にも共通することです。
一覧へ戻る
依田大介
香港生まれ、6歳で日本帰国後、中学までインターナショナルスクールに通う。大学卒業翌年より読売巨人軍勤務。現在、巨人軍英語通訳。