COLUMN
第5回:選手の心を捉える②

選手の心を捉えるうえで私が大事だと考えているもう一つのポイントは、選手の家族のケアです。家族の要望にもしっかり対応することで、選手からの信頼はさらに高まります。
誰しもそうですが、仕事で本来の実力を発揮できるのは、家族の健康や家庭の安定があってこそだからです。
選手とともに日本に長期滞在していれば、妻や子供が急な体調不良に陥ることはあります。
今までに、選手の妻の授乳障害や、幼児の急な呼吸困難などで対応を依頼されたことがありました。
幸いにもこうした場合、球団トレーナーに相談すれば、専門医を紹介してもらうことは比較的容易です。
病気への対応だけでなく、「乳幼児用製品を多く扱っている店舗はどこか」、「妻が日本の孤児院を訪問したいのだが、受け入れてくれるところはあるか」、「不要なおもちゃを保育施設に寄付したいが、受け入れてくれるところはあるか」といった照会や要望が今までにありました。
対応できることとできないことはありますが、何とかして希望を叶えようとし、できないときも、自分がどのように行動し、それでもどのような事情があってできないのかは、伝えるようにしてきました。
選手への回答を「できない」の一言で済まさないのが大事だからです。
観光のような形で来日する選手の家族に対しても、可能な限りおもてなしをするようにしてきました。
両親が1週間くらいの期間で選手である息子を見に来るというのはよくあり、なるべくチーム内での普段の息子の姿を見てもらいたいと考えています。
事前に監督や球団マネージャーなどの許可を取り、練習中のベンチ内やブルペンなどを見てもらいます。
本当にチーム内で好かれている選手であれば、「あなたの息子のことは皆が良きチームメートだと思っていますよ」と両親に伝えることもありました。
行動しないとなかなか伝わりづらい、「あなたのことを大事に思っていますよ」というメッセージを、なるべくたくさん選手に伝えるようにしています。
こうしたことは球団も重視していることです。
選手の家族をまとめてドームのテラス席に招待し、食事を楽しみながら試合観戦してもらうといった、家族をもてなすことに焦点を絞った取り組みを、不定期ですが行っています。
選手がケガした時の対応と、家族への心配り。この二つを前回と今回で取り上げました。
困っている時に親身になってくれ、自分の大事な存在を丁重に扱ってくれる。
誰であっても、されれば感謝の念を抱くのは自然なことでしょう。

依田大介
香港生まれ、6歳で日本帰国後、中学までインターナショナルスクールに通う。大学卒業翌年より読売巨人軍勤務。現在、巨人軍英語通訳。